ウクライナ大統領、中立・非核国の地位を受け入れる用意
(出典:2022年3月28日 CNN)
1ヵ月が過ぎたウクライナ侵攻では、いよいよプーチンが親米派のゼレンスキー政権を転覆させ、親ロシア派の政権を樹立することでウクライナを支配するという動きが始まっています。
そのためには、ロシアは首都キエフを占領することが必要ですが、ロシア軍は侵攻と撤退を繰り返しながら親ロシア派の政治勢力を政権に就けるタイミングを見計らっているようにも見えてきます。
親ロシア派の政治家たちは、まずウクライナの憲法を改正してNATOとの間の「中立化」または「非武装化」、そして「非ナチス化」を確保することが課題となっています。このウクライナの新政府は、クレムリンと協定を結ぶことで治安を維持するものです。
憲法改正には、国内で使われているロシア語の地位の保証や、クレムリンの影響を受けた地方政府により多くの権力を与えるための「ウクライナ連邦」の実現も含まれています。
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(出典:2022年3月27日 Yahooニュース)
しかし、ウクライナ西部にネオナチ(民族主義者)の残党が残っている場合、新政府を承認しない可能性が高く、分離独立運動が起きることは避けられません。だから、プーチンは徹底してネオナチ殲滅作戦を各地で実行しているわけです。
もし成功すれば、ロシアの目標であるNATOとの非軍事化と中立化を達成する可能性が高く、憲法改正によってウクライナがNATOに加盟入りすることを妨げることができます。ただし、ロシアはウクライナに対して恒久的な軍事的影響力を維持することが条件です。
また、国際社会から承認されない新政府に資金を提供しなければならなくなるため、長期的には最もコストがかかると考えられます。さらに、ウクライナ西部ではネオナチの残党が抵抗運動を起こすのは確実です。
そして、欧米諸国がロシアへの経済制裁を無期限に継続することはほぼ確実であり、ロシア経済は次第に弱体化していく可能性もあります。短期的には、軍事力で秩序を維持できるかもしませんが、長期的には厳しくなってきます。
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(出典:2022年3月23日 Yahooニュース)
今後、もしゼレンスキー政権が居座る状況が継続される場合、プーチンは政治的に圧力をかけながらロシア軍をウクライナから撤退させることも考えられます。プーチンは、ウクライナの中立・非武装化を憲法に明記させ、それを保証させるためにロシア軍基地を駐屯させます。
ウクライナは、完全にクリミア半島の領有権も放棄し、東部のドネツク州とルガンスク州をロシアに譲渡し、ついでに連邦制を固定化してもマウリポリなどの都市部はすでに廃墟と化しており、政治的混乱の中で復興が始まります。
現在のロシアは、長期的な軍事作戦や占領を目標としないまま、ウクライナを抑え込むことが必要です。一方の欧米諸国は、ロシアの軍事的影響力を最小限に抑えることができれば、時間をかけてロシアへの経済制裁を緩和することができるかもしれません。
いずれにしても、ロシアは軍事介入と占領でウクライナに脅威を与える以外に方法はありません。ウクライナ国民の一般的な反ロシアの政治姿勢が変わることはなく、ロシアへの反発は悪化する一方です。
やがて、親米派のウクライナ人たちが大規模な反政府デモを起こし、2014年のマイダン暴動のようなことが起きる可能性があります。
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(出典:2022年3月29日 JB press)
最後に、ロシアはウクライナを東西に分割して西部をウクライナ政府が支配させ、東部をロシアが占領(独立国家として承認)するという方法もあります。
ロシアは、新たに承認された政府の領域のみを占領し、ドニエプル川以西はウクライナ政府の支配下にある地域はNATOとの緩衝地帯として機能させます。あくまで、ウクライナ全土を占領する必要はないということです。
ロシアがロシア系住民が多い東部を、経済的、政治的、そして軍事的に緊密な関係を保つことができれば、復興費用も含め、そこまでコストをかけずに済みます。しかし、西部は民族主義的なネオナチが反ロシア思想を高める危険性をはらんでいます。
今後、ロシアはウクライナの面倒を見ながらコストをかけて復旧・復興を始めることになります。西側諸国は東部2州を国家として承認しないので、中国やインドなどと協力しながら運営していかなければなりません。
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