佐藤優「『プーチンの精神状態は異常』という報道は、西側が情報戦で負けている証拠である」
(出典:2022年3月7日 PRESIDENT Online)
ロシアのこれまでの歴史を調べてみると、西側諸国から攻撃を受けるたびにロシア国民は団結してきたことがわかります。
第二次世界大戦でナチスドイツに侵攻された時やアメリカとの冷戦時代は、旧ソ連のテーマであった自己犠牲の思想でロシア国民は、「西洋の腐る肉よりも民族の魂を大切にする」という格言を持っていました。
つまり、当時からロシア人は道徳的に優れた国家を目指していたということです。このような方針はスラブ民族だけでなく、様々な少数民族にも適用されていました。公用語はロシア語ですが、ソ連邦は14の共和国と100以上の少数民族で構成されていたわけです。
しかし、社会主義によって一部の既得権益者が富を独占するなど、社会性が決して平等ではないことや行きすぎた監視社会体制であったことで、民族の統一を主張することに反発する声も多数ありました。
だから、「ソ連人」という自己同一性には、ロシア人やウクライナ人、グルジア人、ベラルーシ人、アルメニア人、アゼルバイジャン人など民族や伝統、文化などを含んだ意味で統一感を生み出していました。
愛国心と祖国への忠誠心を高めるきっかけとして、ソ連邦という国民の道徳的犠牲を美化する言説が使われていました。そして、1991年にソ連邦は崩壊してロシアとソ連は国内外で同じ意味で理解されるようになりました。
ロシア外相が訪中、新世界秩序へ中国と共闘
(出典:2022年3月30日 AFP BB News)
要するに、ロシアで生まれ育った人々にとってウクライナが西側諸国に所属することは、ロシアの歴史の一部を手放すことを意味します。実際に、ロシアの軍事作戦を支持するロシア国民は70%を超え、プーチンの支持率は80%以上もあります。
全てのロシア国民がウクライナ戦争に賛成しているわけではなく、実際に西側の経済制裁で生活が苦しい人たちも大勢います。しかし、プーチン政権を批判することが必ずしも正しいとは考えていないようです。
むしろ批判することで西側の「新世界秩序」を侵入させてしまう危険性があり、ソ連崩壊後のロシアで生まれ育った世代にもそのことが共有されています。たった30年前まで、ロシア国民は言論の自由や宗教の自由を持つことが許されていませんでした。
閉店したはずの「丸亀製麺」が「マル」にロシア側が“無断営業”か
(出典:2022年4月11日 TBS NEWS)
20年前にようやくマクドナルドやスターバックスコーヒーなどが開店しましたが、ほとんどのロシア人は利用したことがありません。なぜかと言えば、西側のサービスには高級志向のイメージがあるからです。
だから、SWIFTからの排除で国内に残されたアメリカのチェーン店にこだわることはなく、店名を変えて営業が再開されています。日本のうどんチェーン店である「丸亀製麺」も、店名が「MARU」に変更されて営業が継続されています。
愛国心と反戦のはざまで揺れ動くロシア人が映し出す「ロシア人であること」
(出典:2022年4月12日 BIGLOBEニュース)
ロシア人の多くは、欧米人や日本人よりも忍耐強く、ストイックであることは明らかです。プーチンが始めたウクライナ侵攻に対しても、驚くほど献身的に支持しています。ロシア人にとってロシアは、愛する祖国であり、ありのままの自分たちを受け入れてくれる居場所であるということです。
侵攻前の東京・北京オリンピックでも、ロシア代表選手は西側からROC(ロシア・オリンピック委員会)で参加させられ、自国が国際社会から拒絶されることに慣れている印象があります。
日本でもロシア人が特に嫌われていることはないですが、心無い人たちからは何らかの嫌がらせを受けているようです。だから、ロシア国民全体がプーチンに期待しているのかもしれません。
この200年を振り返ってみても、ロシア人は常に西側諸国からの脅威に晒され続けており、いつ解体されてもおなしくないという危機感を持っています。例えば、31ヵ国が加盟するNATO(北大西洋条約機構)はウクライナ国境まで拡大を続けています。
フランスのナポレオンに侵攻され、ナチスドイツのヒットラーに侵略された後、今度はアメリカとの冷戦が40年以上も続きました。そして、アメリカのバイデン政権とNATOがロシアをウクライナ侵攻に導いたわけです。
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