【米国市況】国債下落、大量の社債発行が重し−ドルは147円台後半
 (出典:2023年9月6日 Bloomberg)
8月に入り、アメリカの地方銀行だけでなく、大手銀行のJPモルガンなどの社債の格付けが下げられています。
その理由は、FRBが政策金利を大幅に引き上げたことで、米国債の格付けが下げられ、しかも金利の上昇で米国債の市場価格が下落したからです。アメリカの銀行は、これまで安全資産とされていた米国債を大量に購入して資産を運用していました。
ところが、金利の上昇によって米国債の価格が下がり、巨額の損益を出したことで財務状況が悪化したわけです。そして、今年3月にはシグナチャー銀行(ニューヨーク州)やシリコンバレー銀行(カリフォルニア州)などが経営破綻しました。
しかし、これからさらに銀行が破綻する原因になるのが不動産バブル崩壊です。銀行は、不動産用担保ローンを不動産会社に貸し付けていますが、金利の上昇で延滞する不動産会社が徐々に増えてきています。
中国不動産バブル崩壊が深刻化する「5つの理由」
 (出典:2023年9月9日 Yahooニュース)
特に、コロナ騒動によるロックダウン(都市封鎖)によって、多くの企業が都市中心部から郊外へ拠点を移転して以降、サンフランシスコ市やニューヨーク市のオフィスビルでは空室が埋まらず、周囲の治安が悪化しています。
例えば、札幌市や福岡市中心部のオフィス空室率は2.5%程度ですが、その10倍の25%以上というのは異常です。全米の大都市で起きていることですが、中国の不動産バブルと同時にアメリカでも金融危機が起きる可能性が高まっています。
もし不動産会社が連鎖的に破綻していくと、銀行も次々と巨額の不良債権を抱えることになり、3月のような破綻が起きるのは避けられなくなります。アメリカの景気後退は不動産バブル崩壊で始まり、下手をすると世界大恐慌にまで広がっていくわけです。
「アメリカ経済は景気拡大に向かっている」…その根拠となる4つのシグナル
 (出典:2023年7月5日 MONEY INSIDER)
実は、アメリカの景気先行指数は少しずつ悪化しており、景気が悪くなると政府や州、市などが得られる税収が前年との比較で約10%も減っており、過去最悪ペースであると報道されています。
また、トラック貨物の輸送量も急激に減っており、これも前年との比較で約10%減少し、同時に雇用者数も7月に大きく減らしました。いずれも2021年度以来の落ち込みとなり、コロナからのV字回復どころかWのような形になりつつあります。
現在、アメリカのインフレ率は3%」ということですが、賃金が上がっても個人消費がそれほど伸びないのは景気が悪化し始めているからです。当然、景気がいい業界(会社)と悪い業界(会社)があるのは当たり前のことですが、これから何をしても厳しくなると思われます。
全体的に需要が少なくなれば収入が減ることになり、カネが回らなくなるのは時間の問題です。このように、不況に入る可能性を示す数値は様々ですが、問題は私たちが住んでいる日本にも影響が及ぶことです。
世界企業の利払い負担、過去最大18兆円 デフォルト増加
 (出典:2023年9月12日 日本経済新聞)
米ドル資産を保有している人は損益を増やすことになりますが、逆にアメリカの信用不安で円高ドル安に転換すれば輸入品が安くなるわけです。しかし、日本のインフレ率も上がっていくならあまり意味はありません。
世界大恐慌のきっかけとなるのは金融危機なのか、巨大地震なのか、それとも戦争なのかはわかりませんが、アメリカを中心とした西側諸国、G7がこれから好景気になることはないと考えるのが普通です。
日本の不況は2014年から始まりましたが、この10年を何とか乗り切ってきた会社経営者や個人はある種の感覚が研ぎ澄まされていると思います。その感覚を大事にし、これから起きることへの準備をしていくしかありません。
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