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アメリカとロシアの軍事的対立の根源についてA 「ドイツと日本、イランとの同盟関係」

ドイツのメルケル首相とロシアのプーチン大統領
ドイツのメルケル首相とロシアのプーチン大統領 Image from Parso today

ドゥーギンによるロシアが目標としている世界秩序についての論文は、実は英語ではなく、ロシア語で書かれており、ロシア語の記事や文献の翻訳を英語で読んでみる必要があります。


そこでAtlasでは、社内にいるロシア語のエキスパートに翻訳を依頼し、何とかポイントをつかむことができました。


まず、ドゥーギンはロシアが目標とする世界秩序の最大の妨げになっている勢力こそ、グローバル化を標榜するアメリカであるとし、アメリカの影響をユーラシア大陸から徹底的に排除しなければならないと考えていることがわかりました。


そして、これを排除するためにロシアはドイツ、日本、そしてイランと同盟関係を結び、アメリカと対峙するための枢軸を形成しなければならないというわけです。


まず、ヨーロッパからアメリカの影響力を排除しなければならないため、ドイツがロシアと国益を共有し、アメリカに敵対するように誘導するということを考えています。この目標を実現するためには、第2次世界大戦後、ソビエトが併合した旧ドイツ領のカリーニングラードをドイツに返還するような大胆な譲歩を行うことも考えているようです。


ドイツがロシアと同盟関係を結ぶようになれば、ドイツがアメリカに敵対的になれば同時にフランスも追随してくることになります。そして、この枢軸が機能してアメリカを排除できれば、ロシアはドイツをゆっくりと「新ユーラシア主義」の世界秩序に参加させることができるようになるということです。


一方、東アジアからアメリカの影響力を排除するためには、ロシアは日本と強い同盟関係で結ばれる必要があるものと考えています。これを実現するためには、北方領土は日本に即刻返還することになるかもしれません。


そして、もし東アジアからアメリカの影響力を排除できるのであれば、ロシアは日本に「大東亜共栄圏」という戦前に日本が目指したアジア秩序を再度構築するような自由を与える必要もあると思います。


しかし、中国がロシア南部や朝鮮半島に領土を拡張する野心を持つようであるならば、ロシアは警戒する必要があります。なぜかと言えば、中国はアメリカ的なグローバル化の恩恵によって成長した国だからです。


その意味では、中国は同盟国ロシアではなく、アメリカの手先になることを選ぶ可能性もあります。その代わりに、ロシアは長年独自の路線を探ってきたインドとは同盟関係になることができそうです。インドは、中国と敵対しているためにスムーズにいい関係をつくれるかもしれません。


他方、混乱が絶えない中東には、全体を管理する能力のある国家が必要であり、これまではアメリカがサウジアラビアを利用して中東における影響力を拡大してきました。当然、アメリカのこの影響力を排除するためには、アメリカに代わる国が必要です。


それが、ロシアとイランであり、両国は同盟関係を築くことで影響力を強化し、中東を自らの陣営に引き込むことができるものと考えています。この時、大きな障害となるのはNATO(大西洋条約機構)の一員であるトルコの存在です。


ロシアは、何とかトルコをアメリカから引き離し、ロシア側に引き寄せることで新しいユーラシア大陸の秩序に参加させることが重要となってきます。


これが、ドゥーギンの主張するロシアを中心とするユーラシア型世界秩序ということですが、実は中国が同盟国として入ってないことがわかります。


ドゥーギンは、中国をロシアと競合するユーラシア型の世界秩序を目指す国家であると見ており、中国によるこれ以上の拡大を警戒しているように見えます。つまり、ドイツ、日本、そしてイランは、中国の拡大を押さえ込むための防波堤として機能するものと考えているようです。


ドゥーギンは、将来的にロシアが主導する「多民族型」の世界秩序と中国が主導する「一帯一路型」の世界秩序の争いとなると見ています。


一時期、プーチン大統領の側近であったことから考えても、ドゥーギンの「新ユーラシア主義」とそれに基づく新しい世界秩序の概念が、どのくらいプーチン大統領に影響力を持っているのかはわかりません。


しかし、プーチン大統領による外交政策を見ていくと、ある程度ドゥーギンの路線を踏襲している可能性があり、イランの支援やトルコの取り込み、そしてドイツのメルケル首相や日本の安倍首相との関係から想像がつきます。


また、ロシアは中国と同盟関係にありますが、それはアメリカに対抗する必要があるからで、もしその必要性が低下するとロシアと中国は競合相手にあるかもしれません。


いずれにしても、もしロシアとアメリカとの対立の根源的な理由が、全く異なった世界秩序を国是としていることにあるとすれば、一時的な小康状態はあったとしても両国の対立が解消することは思えません。


今後、世界秩序の構築を巡って、いずれかの時点でアメリカとロシアが衝突することも可能性としては考えられるわけで、日本としてはしばらくの間、様子見にならざるを得ないということです。

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