1980年代の日米貿易摩擦と全く同じ、「米中ワクチン開発戦争」が起きている｜北海道で唯一の「情報リテラシー教育スクール」

米中ワクチン開発競争、いらだつ米国、実力つける中国

(出典：2020年6月10日日経バイオテク）

新型コロナウイルスの世界的蔓延が起きる前の昨年まで、アメリカのトランプ政権は中国の野心的な産業発展政策「中国製造2025」を潰すために、自由貿易の原則に反する高い関税を中国に課してきました。

一方、中国も報復措置としてアメリカに対して高い関税を課したことで、いわゆる「米中貿易戦争」が始まったわけです。昨年までは、世界経済を景気後退（不況）に引き込む最大の危機と見られていました。

そして現在、トランプ政権は「中国による新型コロナウイルスのワクチンと新薬の開発」を何としてでも潰すことになりました。報道によると、中国がアメリカの製薬会社のサーバーをハッキングし、データを盗んだというニュースなどから、米中貿易戦争とよく似ている展開のように思います。

しかし、そのような状況にもっと似ているのが1980年代に起きた「日米貿易摩擦」です。実は、1985年頃から日本とアメリカの間にも貿易戦争が起こりました。

日本がバブルがピークを迎えた1989年には、アメリカが不公正と判断した貿易相手国に報復関税などの措置を打てる通商法「スーパー301条」を、日本製のコンピューターなどに適用することを決定しています。

ちなみに、「スーパー301条」とはアメリカの包括通商法の条項の一つで、不公正な貿易への対処や報復を目的とした条項です。つまり、不公正な貿易慣行や過剰な関税障壁を有する日本を「通商代表部(USTR)」が特定し、撤廃を求めて交渉するというわけです。

当時、それでも改められなかったとして、日本からの輸入品に対して高い関税を課すなどの報復措置をアメリカが取り、事実上の制裁条項を行いました。日本側は、これを適用されることを非常に恐れたと言われています。

代表的なターゲットになったのが、パソコンに必要なOS（日本製）の「Tron」です。1988年、Tronは東大の坂村教授が開発した当時の最先端OSで、マイクロソフト社のOSであるWindowsやアップル社のMacintoshなどの競争相手であったということです。

現在、中国がワクチンや新薬を公共財産（OS）として、世界中の人々に無償供与しようとしているように、坂村教授はTronの仕様書を無償で公開し、どんな企業や組織でも開発に参加できるようにしました。

要するに、現在の中国と全く同じ状況であるということです。当時、日本政府や日本企業の消極性もあり、パソコンのOSとしてのTronはアメリカによって完全に潰されました。もしTronが潰されなければ、1992年代から始まったインターネットの発展は日本が主導していた可能性があります。

1990年代に入り、日本はアメリカに貿易戦争で敗北し、その直後にバブルが崩壊して以来、日本は現在まで続く長い停滞期に入ってしまいました。

戦後の日本の発展と成長を支えた日本型経済は、この時に欧米勢によって解体されたというわけです。一方、中国は30年前の日本のようにアメリカに敗北するのでしょうか？

実際に、一昨年から関税を課し合った「米中貿易戦争」や5Gなど「米中IT技術戦争」では、中国が勝利したまま新型コロナウイルスの蔓延が始まり、一時的に休戦した状態です。その「米中生物兵器（新型コロナウイルス）戦争」でも、中国が何とか抑え込んで勝利したように見えます。

それに対して、アメリカは未だに感染拡大が続いており、実質的に中国に敗北したように思います。だから、これから激化する「米中ワクチン・新薬開発戦争」でも敗退することはないのかもしれません。

結局、敗退の可能性が高いのは感染者数と死亡者数が世界一多いアメリカではないでしょうか？

このままでは、いつまで経っても都市封鎖を解除することができないまま半年が過ぎ、アメリカ経済の回復は全く望めなくなり、地盤沈下する可能性が出てきました。そうした状況になった時、トランプ政権の中国に対する敵意は臨界点を超え、冷戦ではなくなるものと考えられます。

米国が似る覇権国アテネ、疫病流行後にスパルタに敗戦

(出典：2020年5月17日 Yahooニュース）

これまでの人類の長い歴史では、ギリシャ時代からローマ帝国時代、ポルトガル、スペイン、イギリスなど覇権国の移行が戦争なしに平和理に行われたことはありません。今、私たちが住む日本列島の周辺で様々なことが起きています。