米中新たな対立構造 冷戦終結30年―揺らぐ国際秩序
「弁証法」とは、共和党や民主党であったり、正義と悪役、民主主義と共産主義など、一見して対極にある組織や主義の主張をする中で、事態を動かすことです。
トランプ大統領は、たった一人で正義と悪役を、しかも同時に演じているので統合失調症に見えますが、決してそうではないわけです。これこそ、彼がニューヨークの不動産業で巨万の富を築いた方法であるということです。
裏向きには緻密な計算がありますが、表向きには暴言や甘い言葉を使って世界中の人々を振り回しています。そして、敵対勢力が反発している間にトランプ大統領の望む場所に誘導されてしまっています。
今、トランプ政権はアメリカの世界覇権を放棄し、世界各国に駐屯している米軍基地を全て撤退させることが目的となっていますが、軍産複合体のような反対勢力を気にして、むしろ軍事費を増やしたりすることもあります。
例えば、「ヘーゲルの弁証法」のテーゼ(正)、アンチテーゼ(反)、そしてアウフヘーベン(合)を使いながら、止揚は「軍事中止」で、揚棄が「非核化」を行い、平和のための「ディール(交渉)」を行っています。
結局、トータルとして考えると、巨額の軍事費を削減することができれば、アメリカ国民の貧困層約5000万人が食うに困らなくなり、疲弊したアメリカは再び経済的に栄える、つまり「Make America Great Again」という判断をしているわけです。
課題は、戦争で敗北しないまま軍事的優位を保ち、軍備を大幅に削減できるかどうかです。これは歴史上、世界で誰も成功したことのない実験です。ところが、実は約300年前の日本で江戸幕府5代将軍・徳川綱吉が行っていました。
「生類憐みの令」に見る将軍・徳川綱吉の心の闇
つまり、当時の武士の頭の中をサムライ精神から平和主義にしてしまったわけです。昔から日本が世界の最先端であるという証拠は、海に囲まれた島国であるがゆえに外国から侵略されにくかったことからも明らかです。
中国や朝鮮半島から文化を持った皇帝や王族たちは日本に定住できましたが、単なる海賊や軍隊は入国しにくいという島国独特の自然環境がそうさせただけで、別に日本に住む日本人が偉いわけでも何ともないということです。
そして今、5代将軍・徳川綱吉の時代と同じことが世界的に起こりつつあります。要するに、文明と歴史というのは交通手段と通信手段、そして権力の概念で決まるということです。
世界覇権国アメリカに対抗しようと試みる中国やロシアですが、このままではお互いが殺し合いの中で文明そのものが崩壊してしまいます。大事なことは、そのマインドをどのように変化させるか、です。
だからこそ、まず行うべきはこれまで世界中に侵略してきた米軍の縮小から始まります。それが上手くいけば、人類は次のフェーズに進むことができるということです。ただ、そうなると私の仕事が減ることになります。
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