ミャンマー、わずか5年の民主化でも市民は変わった。スーチー国家顧問拘束の軍事クーデターに抵抗し、戦うZ世代。国際社会は助けてくれない
(出典:2022年8月22日 Yahooニュース)
2022年2月24日にロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、欧米メディアではミャンマー国内の内戦(軍事クーデター)について報道しなくなりました。
それからちょうど1年前にあたる20121年2月、突然始まったミャンマー軍による軍事クーデターでは、国内を支配しようとするミャンマー国軍と民主主義の体制を要求するミャンマー市民との間で何度も軍事衝突が起きています。
最初は平和的な抗議運動でしたが、国軍がデモ参加者に発砲するようになり、次第に市民側も武装化して対抗するようになったわけです。特に、国軍と緊張関係にあった少数民族の武装集団に抗議していた若い人たちが加わり、軍事訓練を受けています。
最近は、国軍を標的にした攻撃が増えており、国軍が女性や子どもを含む大勢の市民を無差別に虐殺する凄惨な事件が相次いでいます。規模が小さいということで日本のメディアも報道することはほとんどありません。
ミャンマーの抗議行動、なぜ暴力化しているのか クーデターから1年
(出典:2022年2月2日 BBC)
首都ネピドーなど、大都市では平和な日常の光景が続いていますが、ミャンマー国内は内戦状態にあります。ミャンマーでは、アウンサン・スーチーの登場で1980年代から民主化要求運動が続いています。
もう1年半も続いている市民による「不服従運動」は、電車やバスの運転手がボイコットするなどインフラを管理する交通機関を麻痺させています。また、役所や病院、そして学校の教師も出勤しなくなり、一部の政府機関も閉鎖に追い込まれています。
さらに、一般人の銃の購入・所有が許されなかったミャンマーでは、警察と国軍だけの特権でしたが、軍事クーデターに反対する多くの市民が拷問・殺害されたのをきっかけに、銃を国外から調達したり、自分たちで自作するようになりました。
ミャンマーの人口の約7割は多数派のビルマ族が占めており、これまでミャンマーの内戦は地方に住む少数民族と国軍の間で戦闘が起きていました。つまり、ビルマ族が戦闘に参加することはほとんどなかったということです。
ミャンマー民主派が「攻撃型ドローン」投入…民主派政治犯の死刑執行への反発で戦闘激化
(出典:2022年8月10日 Yahooニュース)
ところが、ビルマ族も国軍の横暴に抵抗して自分たちの村や町を守るために軍隊を設立しました。ビルマ族の住む州や地域では「地方防衛軍(LDF)」が立ち上がり、国軍によるクーデターで政権を奪われたアウンサン・スーチー率いる政党「国民民主連盟(NLD)」と協力するようになりました。
その他、国軍政府とは別に「国民統一政府(NUG)」という組織も立ち上がり、国防省が設置されています。ビルマ族の人たちはNUGに寄付をしたり、債券を発行したりして戦闘に必要な武器や装備を集めています。
これまで銃など一度も手にしたことのない一般市民が、横暴な国軍に抵抗するために自分たちだけで武装化しています。近隣国のタイや中国、バングラデシュなどから武器を購入し、ゲリラ戦で使われる地雷なども仕掛けています。
ミャンマーの若い人たちは、銃の扱い方を知るためにインターネットで検索して知識を得ています。銃や弾丸、そして爆弾の製造方法を英語などで書かれている情報をミャンマー語に訳し、同時に権利のために戦うことも学んでいます。
ウクライナのように、外国(欧米諸国)の援助に期待せず、自分たちの自由のために戦うと決めています。このように、ミャンマーでは武装集団から一般市民まで国民の多くが国軍に抵抗する動きがあります。
ロシア製兵器で住民を家ごと焼き殺す…ミャンマー軍事政権が「自国民殺し」を躊躇しないワケ
(出典:2022年8月16日 PRESIDENT Online)
一方、国軍の兵力は陸・海・空軍を含めると40万人で、警察内にも軍隊があります。東南アジア諸国では、ベトナム人民軍に次ぐ兵力を持っており、ロシア製の戦車やヘリコプター、戦闘機などを配備しています。
だから、十分な武器がや装備を持たない抵抗勢力が国軍に対抗することはできないのが現状です。しかし、もう70年以上も内戦が続いているミャンマーでは、何度も内戦が起きては停戦合意が成立されてきました。
1990年代は、ビルマ共産党や少数民族のカチン独立軍(KIA)やカレン民族同盟(KNU)などが国軍と内戦を繰り広げていましたが、そのたびに停戦合意が締結されてきました。2011年に武力衝突が起きましたが、2015年に停戦しています。
2018年には全ての武装組織が国軍との間で停戦が成立しましたが、国軍の兵士たちの実戦経験はほとんどありません。その経験の少なさから、いつ武装組織が一斉に国軍を攻撃して崩壊するかわからなくなっています。
日本の自民党議員と同様、国軍の関係者はミャンマーの新興財界とつながっており、予算を中抜きしてカネを稼ぐことに夢中になっています。典型的な「賄賂経済」となって、内部から政権が崩壊していくことも考えられます。
|