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低成長状態でも企業が利益を得られるようにした金融と債券「CLO」の破綻

グレイ・リノ


実は、先進国では1990年代から少子高齢化や人手不足など構造的な低成長状態はすでに始まっていたため、金融的なビジネスが開発・研究されていました。


これは、製造業などの巨額の設備投資によって拡大する成長期の経済とは大きく異なる構造であったことがわかっています。


1960年代の高度経済成長期の日本や現代の中国が典型的ですが、巨大な製造業が新しいテクノロジーと新製品を生産するための設備投資を行うと、当然、周辺産業にも大きな波及効果をもたらします。


それと同時に、雇用も促進されるため賃金は上昇し、それによって国内の消費需要は増大し、それがまた景気を拡大するという好景気の循環が起こり、生産と消費の拡大を伴う経済の健全な成長ということができるかもしれません。


一方、すでに成長限界の構造的な壁に直面した現代の先進国の経済は、中央銀行(日本は日銀)による極端な金融緩和策による資金の潤沢な供給を背景に、@買収(M&A)し、A自社株を自ら買って株価を上げ、B債権を金融商品化して売ることで、金融的なブームを演出することで、景気の拡大が維持されているのが現状です。


では、こうした金融ブームに依存した構造は危険なのかどうかですが、この構造が将来の金融危機を発生させる可能性は高いと思います。まずは金利の上昇で、債券市場に大きな影響を与えると見られています。


投資銀行やファンドなどを組成している金融機関の多くは、銀行からの低利の短期ローンを借り入れ、企業に長期のローンを提供しています。そして、そうしたローンから組成した債券の販売から得られる収益で、借り入れた短期ローンを返済しています。こうした状況で金利が上昇すると、こうした金融機関はローンの返済ができなくなります。


また金利の上昇は、ローンをして債券の元本を提供した企業にも影響を与えることになり、ローンの金利が上昇すると、当然企業のローン需要は減ります。なぜなら、多くの企業は金利の負担を軽減するために、ローンの返済を活発化させるからです。


しかし、これは債券の販売の収益で借り入れた短期のローンを返済している金融機関の経営状況を悪化させ、ローンの需要が減退するので、組成され、販売される債券の量も減少することになりかねません。


すると、組成している金融機関は、短期ローンの返済が難しくなり、窮地に追い込まれるところも出てくるものと考えられます。さらに、金利上昇によるローン需要の減少は、ローンの担保価値を上昇するために行っていた自社株買いを縮小させ、これが多くの企業で一斉に起これば、株価を押し上げていた要因が失われ、それが株価を実際に押し下げる可能性があります。


そして、ローン需要の減退とともに企業買収も減少する可能性もあり、企業買収は企業の高い収益性を支えているのでこれが減少すると、企業の期待収益も下がる可能性があります。これが株価を下落させるということです。


金利の予想を越えた上昇とともに、景気の悪化が引き起こす企業の破綻が、債券を破綻させる可能性もあり、特に「CLO」は富裕層に人気のある投資対象であるだけではなく、多くの金融機関が保有する一般的な金融商品でもあります。


もし景気の悪化による企業破綻が連鎖すると、「CLO」の価格は暴落し、これを保有する金融機関は大きな損失を抱えることになり、経営を大きく悪化させることにもなりかねません。これは2008年の金融商品であった「CDO」の破綻に似ています。金融危機の引き金になるかもしれません。


さて、アメリカの保険会社「アフラック」のCMに登場する白鳥(スワン)のうち黒い白鳥がいますが、「ブラック・スワン」というのは金融用語で「予想できない問題」という意味があります。つまり、「何かあっても対応できるように保険に入っておけ」ということです。


ところが、アメリカでは今、「グレイ・リノ」という言葉が注目されており、「リノ」とは動物のサイのことですが、サイは普段大人しいですが危険を感じると急に暴れ出し手がつけられなくなります。「グレイ・リノ」とは、問題があることを誰もが認識しているものの、今は問題がない危機のことです。


これは、誰も認識していない予想を越えた突発的な危機である「ブラック・スワン」とは反対の意味を表しているわけです。要するに、企業買収や自社株買い、そして債務は「グレイ・リノ」である可能性が高いということになります。


例えば、予想もしなかった金利の上昇や予想を越えた景気悪化による債務の破綻などが発端となり、再び金融危機のトリガーが引かれる可能性は否定できなくなりつつあります。それがいつ起こるのかは現在のところは断定することはできません。


しかし、2019年9月ごろから2020年初にかけて、米中対立や北朝鮮問題を含む予測できない地政学的リスクがきっかけとなり、「グレイ・リノ」が暴れ出すとの予測も多くなっているのが現状です。

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