ドル決済から弾かれたロシアが夢想する新決済網「BRICSペイ」、中印はどこまで頼りになるか?
(出典:2024年10月31日 JB press)
為替市場では、1ドル=150円台の「円安ドル高」が続いており、一見すると米ドルが強くて日本円が安いという印象を受けます。
日本の主要メディアも、米ドル資産(米国債や米国株)を購入して資産運用を推奨するような報道を流していますが、実は世界中で米ドルを使用しない傾向が見られています。つまり、西側諸国以外で「脱ドル化」が起きているということです。
そのきっかけとなったのが、2022年2月24日に始まったウクライナ戦争であり、西側諸国がロシアに対して経済制裁(国際決済システムSWIFTからの排除)を課して以降、ロシアは中国やインド、アフリカ諸国などに大量の原油や天然ガスを輸出したことで経済が大幅に成長しています。
ロシアは、ヨーロッパ諸国での販売価格よりも約30%もディスカウントしており、例えばインドはロシア産の原油を独自で精油し、ヨーロッパ諸国に転売して利益を上げています。結局、ロシアに経済制裁を課したヨーロッパ諸国は、ロシアから買っていた時よりコストが増えてしまいました。
二度の世界大戦で酷い目に遭ったヨーロッパ人(イギリス人も含む)ですが、今回の戦争でも苦しんでいるのは一般庶民です。エネルギー価格の高騰や食料品の物価高で、生活がままならない人たちが増えています。
一方、アメリカの言いなりになって、ウクライナに数十兆円を支援(寄付)した日本政府(岸田政権)は、ロシアから原油や天然ガスを輸入できなくなったので、日本は約97%を中東諸国に依存するようになりました。
もしイスラエルとイランが全面戦争になった場合、ホルムズ海峡が閉鎖されるので原油価格は現在の3倍にまで高騰する可能性があります。ガソリンは1リットル=500円、灯油は1リットル=300円まで上がれば、さすがに日本政府も「トリガー条項」の凍結解除と消費税ゼロを実施するしかないわけです。
BRICS summit: Key takeaways from the Kazan declaration
(出典:2024年10月24日 Reuters)
そうした状況の中、ウクライナ戦争をきっかけにロシアや中国を中心としたBRICS諸国とグローバルサウス諸国の間で、米ドルを決済通貨として使わなくなりつつあります。10月24日に閉幕したBRICSサミットでは、独自の金融経済システムが完成したと発表されました。
2022年から開発が始まったBRICSの新しいシステムは、SWIFT(米ドルベース)よりも不便で使いにくいと思いますが、もしアメリカ発の金融危機が起きて大恐慌にまで拡大すれば、BRICSは一気に勢力を発展させていくと思います。
現在、国際決済の手段として米ドルのシェア率は42%であり、各国中央銀行の外貨準備の58%が米ドルと言われています。しかし、この25年間で約30%もシェア率を落としました。共通通貨ユーロの影響もありますが、BRICS+の経済成長がその主な理由です。
アメリカは、ロシアや中国(一部のIT企業)、イラン、ベネズエラ、北朝鮮などに経済制裁を課していますが、それならと人民元やルーブルなどの自国通貨と金(ゴールド)をミックスさせて、世界中で取引量を増やしています。
デジタル人民元、越境決済に力点 中国、サウジなどと実験 国内は活用進まず
(出典:2024年10月9日 日本経済新聞)
また、最近は中国とブラジル(レアル)が二国間貿易決済をそれぞれの自国通貨で行うようになり、さらに「一帯一路」のパートナー国や地域包括的経済連携(RCEP)加盟国であるインドネシアやベトナム、ラオスなどと中国が連帯・連携を強めていることがわかっています。
今年7月、日本では新紙幣が発行されましたが、世界では「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」のシステム開発が進んでいるようです。つまり、財布に入れている紙幣やクレジットカードを使わず、スマホ一つで決済が可能な未来がやってくるということです。
日本でも日銀を中心に計画されていますが、中国やタイ、アラブ首長国連邦(UAE)の各中央銀行は、米ドルベースの決済システムであるSWIFTに変わるサービスを目指しているとのことです。例えば、中国では7月から広東省に限定してすでに導入されています。
実際に、日本の銀行から海外の銀行口座に20万円を送金する場合、SWIFTしか使えないので送金手数料は5000円程度です。また、送金時間も3日ほどと手間も時間もお金も余分にかかっているのが現状です。
ところが、ブロックチェーンを搭載した仮想通貨の送金システムを使えば、手数料は数十円、しかも数秒で送金できるわけです。
中国で浸透する「信用スコア」の活用、その笑えない実態
(出典:2018年6月26日 WIRED)
これが意味することは、中央銀行(日本は日銀)が国民一人一人の消費行動を完全に把握し、国民の将来的な購買行動までをもAIで予測できるようになるということです。近い将来、日本人は中国の信用スコア制度を笑うことができなくなるでしょう。
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